その戦いがいつから始まったかは誰も知らない。
愛を否定し、世界を破壊と混乱におとしめようとする悪の組織・スコーピオンはその勢力を拡大し世界を席巻していた。
しかし、1人の漢の出現により、戦況は一挙に覆される事となったのである。
勇者・オリオンの登場である。
その一太刀は100人もの敵兵を薙ぎ払い、その智謀は難攻不落と呼ばれる砦をたった1日で落とす程であった。
彼がどこから来たのかは、誰も知らない。
しかし、彼の出現後、たった2年でスコーピオンは瓦解寸前まで追い込まれる事となったのであった。
誰もがこの戦いの終結を信じ、愛と平和を謳歌した。
勇者オリオンと月の女神アルテミスとの間に生まれたカリスマは、2人の愛情を受け健やかに育っていった。
10歳になる頃には、既に頭角を顕し知力、武力共に優れている者にしか与えられない「神を超えし者」の称号を得ていた。
父・オリオンはこの息子を大いに誇りにし、また母・アルテミスは限りない愛情で息子の成長を見守っていた。
・・・しかし、幸せは長くは続かなかった。
オリオンの宿敵であるスコーピオンの総帥アンタレスは、早くからオリオンの妻・アルテミスに邪な感情を抱いており、その都度言い寄っていた。
しかし、アンタレスの邪悪な本性に気付いていたアルテミスは、彼に見向きすることもなく、その愛情をオリオンに与えてしまったのである。
その事を逆恨みしたアンタレスは、オリオンを停戦と偽り騙し討ちし、アルテミスをもその毒牙にかけようとした。
しかし、最愛の夫の死を知ったアルテミスは自らその命を絶ってしまったのであった。
自らのどす黒い感情のはけ口を失ったアンタレスは、その矛先を2人の忘れ形見であるカリスマに向けたのであった。
一瞬、訪れた平和への希望はオリオンの死により、あっけなく過ぎ去ってしまった。
再び、勢力を回復してきたスコーピオンに、人々は対抗する手段なく その闇の力の前に次々にひれ伏していった。
今更ながらに、勇者・オリオンがいかに偉大であったかを人々は痛感した。
無力な人々にとっては、勇者の再来こそが生きる上での唯一の渇望であった。
そんな暗黒時代の最中、カリスマは旅立つ決心をする。
両親を亡き者にし、世界を悪で満たそうとするスコーピオンに1人、敢然と立ち向かったのである。
いつ終わるともしれない長い旅路は困難を極めたが、旅の途中で出会った仲間達との協力で次々とその試練を乗り越えていった。
そして、その傍らにはいつもイライザと呼ばれる黒髪の少女が寄り添っていた。
両親の死に悲しみにふけるカリスマを優しく、そして時には力強く励ましてくれたのが幼馴染のイライザであった。
イライザは亡き母:アルテミス似の美女。カリスマがほのかに愛情を抱いていた相手でもあった。
イライザの励ましや仲間たちの助けもあり、とうとうカリスマは宿敵であるアンタレスをその居城に追い詰める。
丸3日間 死闘が続き仲間を庇い、深手を負ったカリスマに今まさに凶刃が振り下ろされようとしていた。
仲間たちが息を呑んだその瞬間、地を揺るがすような雷鳴と共にそこに在ったのは神々しい青き光を全身から放ち、背中に亡き父・オリオンの証を刻むカリスマの姿であった。
圧倒的な強さを見せるカリスマの前にアンタレスはなす術なく敗北する。
しかし、カリスマがとどめをさすのを、一瞬ためらったその瞬間、アンタレスはイライザを捕らえ、そのまま姿を消してしまう。
自分の甘さにより、イライザを失ったカリスマは彼女を取り戻し、再び世界を愛で満たすため1人孤独な戦いへと赴く。
序章・旅立ち・・・完